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銀行カードローンを規制しないと第二のリーマンショックが起きてしまうよという話

先日、全国銀行協会から銀行カードローンの審査厳格化に乗り出すと発表がありました。

 

www.nikkei.com

 

最高裁が発表したデータによれば、2016年は13年ぶりに自己破産を申請する人の数が増えたようです。銀行カードローンの過剰貸付が大きな要因であるとも言われています。

 ただこのニュースは、銀行が調子にのって貸しすぎたから反省した、という単純な話ではないんです。

 なぜ銀行カードローンの貸付残高が急増したのかを紐解いていくと、今回の自主規制へ向けた銀行のただのアピールでしかないことが分かります。

 ただし今後本気で対策を練らなければ、第二のリーマンショックがいつ起きてもおかしくありません。

 そこで今回はカードローン・キャッシングの記事製作を生業としている私が、銀行カードローンの危険性について持論を述べさせていただきたいと思います。

なぜ銀行カードローンの貸付残高が急増したのか

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引用:東洋経済オンライン銀行はもはや「消費者金融」になっている

上記のグラフを見ると2009年末から銀行カードローンの消費者ローンの貸付残高における市場シェアが、右肩上がりに伸びていることが分かります。

 銀行カードローンのシェアが伸び始めた2009年~2010年は、ちょうど貸金業法が大幅に改正された時期であり、消費者金融業界が大打撃を受けた年でもあります。

 消費者金融の過剰な貸し付けやグレーゾーン金利を規制するために貸金業法が改正されて以来、相対的に銀行カードローンのシェアはどんどん伸びていったのです。

 こうしてみると消費者金融業界の自業自得のように思えますが(実際に消費者金融にも責任はあります)、その後の銀行カードローンの動きを見ると、あの頃の消費者金融叩きには思惑があったとしか思えないのです。

 なぜならあの貸金業法の改正は、結果的に銀行しか得をしない異質なものだったからです。

なぜ貸金業法が改正されたのか

貸金業法が改正された大きな原因は、消費者金融の過剰貸付が原因で多重債務者や自己破産に追い込まれる人が続出したからです。

 そのため、年収の1/3以上の貸し付けを禁じる総量規制が導入されました。

 これにより消費者金融は顧客一人への貸し付け上限が厳しく制限され、市場のシェアを大きく失うことになりました。

 また当時は上限金利を制定する法律が二つあり、罰則がない違法金利というグレーゾーン金利も存在してました。

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そのため貸金業法の改正によって上限金利を統一し、違反した業者には罰則を設けました。これにより消費者金融は利益を大きく減らすことにもなりました。

 

ここまでは誰もが納得する必要な改革だったと思います。

問題なのは、法改正以前のグレーゾーン金利時代の融資で支払った利息に対し、過払い金の返還請求が認められた点です。

この過払い金の返還請求が、今後の消費者金融の衰退と、銀行カードローンの隆興を決定づける一打となりました。

消費者金融の過払い金は本当に正しかったのか

そもそもグレーゾーン金利で行われた融資は、違法金利であったとしても罰則は設けられていませんでした。

 また貸主と借主のあいだで合意があれば、法的にも認められる融資だったのです。

 しかし当時は消費者金融=悪という世論の後押しもあり、過去10年分の融資に対しても過払い金の返還請求が、すんなりと認められてしまいました。

 その結果大手消費者金融武富士は倒産し、他の消費者金融業者も経営不能の窮地に陥ってしまいました。この影響は消費者金融業界だけでなく、金融業界全体へと広がり、市場は大混乱です。

 過払い金の返還を認めればこうなることは素人にも分かっていたはず。

 

ではどうして市場の混乱を招くような過払い金が認められてしまったのか。それは貸金業法改正後の銀行の動きを見れば分かるはずです。

貸金業法改正後の銀行カードローンの動き

貸金業法改正によって街金はどんどん潰れていき、大手消費者金融も倒産の危機に追い込まれました。

 そんな消費者金融に手を差し伸べたのが三菱東京UFJ銀行三井住友銀行などの都市銀行でした。

 彼らは倒産間近の大手消費者金融をグループ会社に取り入れ、資金援助を行いました。

 しかし銀行の狙いは起業の立て直しではありませんでした。

 消費者金融をグループ会社に取り入れることにより、個人向け融資のノウハウを手に入れ、銀行も本格的にカードローン業界に乗り出す土台を作ったのです。

 長年消費者金融が積み重ねてきた無担保融資に関するノウハウを手に入れ、欠点とされてきた審査スピードやサービス面を格段に向上させました。

 たとえば、三菱東京UFJ銀行のテレビ窓口や、三井住友銀行のローン契約機など、消費者金融の自動契約機サービスを、名前だけを変えてそのまま取り入れたりしています。

 その結果、銀行カードローンのシェアはどんどん伸びていき、ついに2016年には市場のシェアも逆転してしまいました。

 もし過払い金がなければ、消費者金融が銀行のグループ傘下に加わることはなかったでしょう。また武富士の倒産など、市場を大きく混乱させることもなかったはずです。

 結局2010年に貸金業法が改正されて、得をしたのは銀行だけ。そもそも過剰貸付を制限したいのであれば、貸金業者・銀行に関わらず総量規制を導入するべきなのです。

 

そして現在、当時と同じように銀行の過剰貸付が問題視されているにも関わらず、金融庁は自主規制を促すだけしか動きを見せていません。

銀行カードローンも消費者金融も変わらない

たしかに銀行カードローンは消費者金融よりも金利が低いので、消費者金融と比べると安全です。

 しかし金利が低いといってもわずか3%程度の話。住宅ローンなどと比べて高金利であることに変わりはありません。年率10%以上で50万円を平然と貸し付けています。

 年率10%を超える融資を返済するというのは、かなりきついことです。

cardloantimes.hateblo.jp

以前書いた↑の記事でも解説しましたが、年収250万円の人が50万円借りただけで、返済できるのはほんの1握り。多くは多重債務か債務整理に追い込まれてしまいます。

 

消費者金融の過剰貸付が問題視されて規制したのに、銀行カードローンはわずか数%しか金利の変わらない商品を、規制なしで貸し続けています。

 その結果、貸金業法を改正して以来減り続けていた自己破産申込者も13年ぶりに増加し、多重債務者の数も増えていくことが予想されます。

今さら自主規制をすると言われても…

消費者金融の過剰貸付が問題視されたとき、国は法改正によって厳しすぎる規制を行いました。

 しかし銀行カードローンの過剰貸付が問題視されても、あくまで自主規制を促すだけで、われ関せずを決め込んでいます。

 また今や消費者ローンは銀行の大きな稼ぎ柱となっており、銀行が素直に貸付を制限するとは思えません。何かしらの抜け道を探して、今後もどんどんお金を貸していくはずです。

第二のリーマンショックが近づいている…

銀行がカードローンに利益を頼るのは非常に危険です。カードローンは他のローンと比べて圧倒的にハイリスクだからです。

 担保なしで貸し付けを行うため、万が一債務者が返済されなかった場合、ただの不良債権になってしまいます。

 銀行カードローンの場合、2カ月以上延滞した債権は保証会社(多くは消費者金融)が買い取ることになっています。そのため一見すると銀行は一切損しないように見えます。

 

しかしこの構造はリーマンショックの引き金となった、サブプライム住宅ローンのシステムとよく似ています。

 ハイリスクな金融商品リスクヘッジは、少しのズレが生じるだけで大きな問題となってしまうことを、私たちは先の失敗から学ばなければなりません。

 サブプライム住宅ローンでは、最盛期には60兆円の貸付残高があったと言われています。

 銀行カードローンの貸付残高は6兆円程度。こう比べると何を騒いでいるんだと思われる方もいるかもしれません。

 

しかし日本の4倍のGDPを持つアメリカと、単純に数字の比較をしても意味はありません。

 問題は金融の受け皿となる銀行が、このようなハイリスクの融資事業に力を入れすぎているという点です。

 消費者金融が倒れたときは銀行が支えることができました。しかし銀行が倒れてしまったとき市場で助けられる金融機関はありません。

 2008年にリーマンブラザーズが倒れたときも誰も支えることができず、アメリカの金融市場はいとも簡単に破たんしました。

 最後の受け皿となるべき銀行が倒れてしまうと、他の金融機関も共倒れになってしまうのです。

 今後本気で銀行カードローンの規制を促さなければ、近い将来日本版リーマンショックが起きてもおかしくはないと私は考えます。

 最低でも銀行カードローンにも総量規制を導入するべきです。

 そのためには借金とは縁がない人たちも、他人事とは思わずカードローンやキャッシングのニュースに関心を向けるべきだと思います。

そして現在、銀行がハイリスクな金融商品に頼っている状態に、危機感を持ち国へ訴えなければならないのです。

 

以上、銀行カードローンを規制しなければ、第二のリーマンショックが起きるよという話でした。